内縁の配偶者が不倫した! 慰謝料請求できる?
結婚している夫婦の一方当事者が不倫をした場合,その配偶者は不倫をしたパートナーや不倫相手に慰謝料の請求ができます。
その根拠等については「→離婚慰謝料もらったけど,不倫慰謝料もらえる??」の記事で書いてあるので,参考にしてください。
今回は,結婚していないけど内縁関係にある一方当事者が不倫をした場合,慰謝料の請求ができるのか,という点を考えていきます。
結婚している夫婦の慰謝料請求の根拠は,夫婦の貞操義務にあります。不倫相手に対する慰謝料請求の根拠は平穏な家庭を壊したことによる精神的苦痛というところにあります。
他方,内縁関係の場合,法律上貞操義務というものが発生していません。しかし,婚姻届を出したかどうかの違いで,不倫が許されるものになるというのもなんだか納得ができませんよね。
事実,内縁関係の場合でも慰謝料請求ができる場合があります。それはどのような場合でしょか。
結論からいうと,「内縁関係」と認めることができれば,慰謝料を請求することができます。
しかし,内縁関係とは,非常に認定が難しいものです。
婚姻関係は,婚姻届を出したという形式的な要件があるのでわかりやすいのですが,内縁関係はそうした形式的な要件がないので,「内縁関係です」ということが難しいのです。
単なるお付き合いなのか,婚約状態なのか,同棲状態なのか,内縁なのか…男女の付き合いの濃淡は非常にわかりにくいものです。
裁判上,内縁と認定するためには,端的にいうと「実質的な夫婦」ということができるかどうかです。
具体的には,以下の要件が必要と考えられています。
① 婚姻意思を持っている
→社会的実質的に夫婦になりたいという両者の意思があること
② 共同生活を営んでいる
→同棲していること,経済的支援関係にあること,性的関係があること
③ 社会的に夫婦と認められている
→外形的に夫婦と認定できるような社会的事実があること
④ 婚姻届を出していないこと
→婚姻届を出していたら,それは法律婚です
この要件のうち,③が非常に難しいのです。③が認定されるためには,様々な状況を総合的に考慮していきます。
例えば
・結婚式をあげた
・相互の親族の冠婚葬祭等の行事に出席している
・社会保険の第3号被保険者として登録している
・同居期間が長い
・契約書等に「内縁」と記載している
等です。
もちろん,これらすべてがそろっていなければならないというわけではなく,あくまでも総合的に判断するべき話ですし,これら以外にも夫婦だなと思わせるような要件があれば,③が認定されます。
こうして「内縁関係」が認められた場合には,法律上の夫婦に準じて考えられることになるので,貞操義務も発生することになりますし,平穏な家庭を害されたと主張することもできるわけです。
ただし,注意が必要なのは,不倫相手に対する請求です。
法律婚の夫婦よりも内縁関係の夫婦の方が,周囲に認識されにくいという性質があるので,不倫相手が「戸籍見たけど配偶者の記載がなかったから独身だと思っていた」等の主張をしてきた場合には,慰謝料の請求が認められない可能性があります。
とはいえ,内縁関係と法律婚は婚姻届の有無の違いですから,内縁関係であっても,そのパートナーに不倫をされてしまった場合には,慰謝料請求を検討するべきでしょう。
ご自身が内縁だと言えるかという点は,かなり専門的なお話になるので,弁護士に相談してみることがおすすめです。