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スナックのママとの不倫は慰謝料が発生しないの!?

1 不倫の増加

ワイドショー等で芸能人の不倫が取り上げられ,不倫に対する声がだいぶ大きくなってきました。当事務所でも不倫に関する相談は増えてきているような気がします。

自分のパートナーが不倫をしているとわかったら,法的に何をすることができるか,それは,損害賠償請求です。つまり,不倫によって傷ついた気持ちや不倫によって家庭の平穏が壊れたことについて慰謝料の請求をすることができます。

たとえば,あなたのパートナーが不倫をしていたとしましょう。不倫相手をAさんとします。

あなたが慰謝料の請求をすることができるのは,自分のパートナーとAさんの二人に対してです。なぜなら,あなたが傷ついたのは,あなたの家庭の平穏が壊れたのは,あなたのパートナーとAさんの二人が不倫をしたからで,簡単にいうとあなたを傷つけたのはあなたのパートナーとAさんの二人だからです。

2 スナックのママとの不倫

しかし,このAさんがスナックのママだったら,あるいはホステスさんだったら,慰謝料の請求をすることができないのではないか!?という話が少し前から話題になっています。

仮にそれが真実だとしたら,あなたのパートナーが不倫しているAさんがスナックのママだった時点で,あなたが慰謝料請求することができる相手が,あなたのパートナー1択になってしまいます。そして,あなたとあなたのパートナーとが,お財布一つの夫婦関係だった場合,あなたがパートナーに慰謝料請求をしても,経済的メリットはないですし,何よりもAさんを懲らしめたという感情の処理もできなくなってしまいますよね。

そこで,今回は,スナックのママとの不倫は慰謝料が発生しないのかという点について,過去の裁判例をご紹介していきたいと思います。

3 裁判例

●慰謝料の請求ができないとされた裁判例

東京地方裁判所平成26年4月14日

【事案】

原告の夫がクラブのママである被告と7年にわたる継続的な不貞行為をしたことおよび不貞行為発覚後の被告の対応によって甚大な精神的苦痛を被ったとして,慰謝料の支払いを求めた事案。

【裁判所の判断】

「クラブのママないしホステスが、顧客と性交渉を反復・継続したとしても、それが「枕営業」であると認められる場合には、売春婦の場合と同様に、顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから、そのことを知った妻が精神的苦痛を受けたとしても、当該妻に対する関係で、不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。」と判示したうえで,当てはめとして

・原告の夫が不貞行為開始時点の約5か月前から本件クラブに月に1・2回は定期的に通い,企業の社長として同業者を連れて行くこともあったものであって,本件クラブや被告にとっての優良顧客であった。

・そのような優良顧客状態が本件不貞行為終了時まで続いていた

・不貞行為の態様は,主として土曜日に,共に昼食を摂った後に,ホテルに行って性行為をし,その終了後に別れるというもので,「枕営業」における性交渉の典型的な態様に合致する

・このような態様の性交渉を月に1・2回繰り返したというものであって,その頻度は太郎が本件クラブを訪れる頻度と整合していた

という事実認定から,「当該性交渉は典型的な「枕営業」に該当すると認めるのが相当である。」と結論づけています。

 また,7年間という長期にわたっているのだから恋愛感情があっただろうという原告の主張については,長期だとしても優良顧客である期間と合致している以上,枕営業に他ならないとしています。

●慰謝料の請求ができるとされた裁判例

(1)東京地方裁判所平成27年7月27日

【事案】

原告の夫がソープランドで知り合った同店従業員である被告と,店舗内および店舗外で肉体関係を有していた点について慰謝料の支払いを求めた事案。

【裁判所の判断】

店舗内の不貞行為のみであった時期については,婚姻共同生活の平和を害するという点について被告に故意又は過失があったとは言えないから,不法行為は成立しないと認定しました。他方,店舗外でも会うようになった時期以降の肉体関係は,不法行為の成立を認めています。

ただし,この裁判例における被告はソープランドを退職しており,店舗外で原告の夫と被告が会うようになったのは,被告が退職した後のことです。会う度に,原告の夫は被告に対して,お小遣いをあげていたようですが,退職している以上,被告の行為が枕営業とは言えない関係でした。

(2)東京地方裁判所平成26年3月25日

【事案】

原告の夫がホステスである被告と不貞関係になり,被告が原告の夫との子を妊娠し,出産した事案。この裁判例の争点としては,被告が,原告の夫を独身だと思っていたという点です。

【裁判所の判断】

原告の慰謝料請求は認められています。

(3)東京地方裁判所平成30年11月19日

【事案】

原告の夫がホステスである被告と不貞関係になり,慰謝料を請求した事案。この事案では,裁判前に原告が被告に対し,別れるならば慰謝料の請求はしないと弁護士を通して伝えていたが,これに対し被告は,結婚願望はないが,交際は長く続けたい旨の回答をしています。争点としては,不貞関係時にすでに原告夫婦の婚姻関係が破綻していると思っていたという点です。

【裁判所の判断】

原告の慰謝料請求は認められています。

被告としては,枕営業の一貫であったという反論はしていますが,訴訟前交渉の時点で交際は長く続けたい等と回答しているので,枕営業か否かという点については,裁判所は何らの判断もしていません。

他多数

4 解説

 以上のとおり,基本的にはスナックのママとの不貞であっても慰謝料の請求が認められているケースが大半です。分岐点としては「枕営業といえるか」という点です。枕営業であるとなぜ不法行為にならないかというと,「枕営業はあくまでも商売のためなので,夫婦関係を壊そうとか,悪い影響を与えようとかそういう考えがない」からです。

 不法行為が成立するためには,「故意または過失」が必要なのですが,枕営業にはこの故意または過失がないのだ,ということです。

 しかしながら,そもそも最高裁第二小法廷昭和54年3月30日判決では,ホステスとして勤務していた女性がした不貞行為については,故意または過失によって他人の配偶者の夫または妻の権利を侵害したことをもって必要かつ十分としており,愛情の有無等は不貞行為の成立に影響しないと判断しています。ようするに,ホステスであっても相手に配偶者がいることがわかったうえで不貞行為をすれば,その不貞行為によって配偶者の権利が侵害されていることがわかるでしょう,それで不法行為は成立だよ,という判例なのです。

 平成26年の裁判例はこの最高裁判例と整合性がつかないように思えるのですが,奥さんは控訴せず,判決が確定しているので,平成26年の裁判例が最高裁までいけばどのような結論になったのかは,わかりません。

 いずれにしても,不倫相手がホステスさんやスナックのママだからといって慰謝料請求をすることができないというわけではないので,しっかり弁護士に相談してみることをおすすめします。

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竹内 省吾 弁護士
弁護士法人 エース
代表弁護士竹内 省吾
所属弁護士会第一東京弁護士会

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